コーヒー豆はどこの国が美味しい?初心者必見の「有名産地7選」国別の味の特徴

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一杯のコーヒーがもたらす、安らぎと豊かな時間。多くの人々にとって、コーヒーは日常に欠かせない存在かもしれません。しかし、その奥深い世界に一歩足を踏み入れると、「一体どこの国のコーヒー豆が美味しいのだろう?」という素朴な疑問に突き当たることがあります。この問いに対する答えは、実は一つではありません。なぜなら、「最高のコーヒー」とは飲む人の好みによって変わり、それぞれの産地が持つ独自の物語と個性を知ることから、自分だけの一杯を見つける旅が始まるからです。

この記事では、あなたのコーヒー選びの羅針盤となるべく、コーヒーで有名な国の魅力に迫ります。まずは、なぜ国によって味が変わるのか、その背景にある「コーヒーベルト」や「精製方法」といった基礎知識を解説します。そして、その知識を元に、世界中から厳選した7つの有名産地を巡る「ワールドコーヒーツアー」へとご案内します。この記事を読み終える頃には、コーヒーショップの棚に並ぶ豆の産地名が、単なる地名ではなく、味や香りを指し示す確かなヒントとして見えてくることでしょう。

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コーヒーで有名な国を知るための基礎知識

コーヒー豆のパッケージに書かれた国名が、なぜ重要なのでしょうか。それは、国や地域が持つ「テロワール」と呼ばれる栽培環境、そしてそこで育まれた文化や技術が、一粒一粒の豆に独自の個性を刻み込むからです。ここでは、それぞれの国の特徴を理解するために不可欠な、3つの基礎知識を紐解いていきます。

世界のコーヒー栽培の適地「コーヒーベルト」とは?

世界のコーヒー生産国のほとんどが、地球の赤道を中心に、北緯25度から南緯25度の間に位置しています 。この帯状の地域は、その形状から「コーヒーベルト」または「コーヒーゾーン」と呼ばれています。

コーヒーの木は非常に繊細で、その生育には特定の気候条件が求められます。具体的には、年間の平均気温が約20℃前後で、昼夜の寒暖差があること、そして霜が降りないことが絶対条件です。霜はコーヒーの木を枯死させてしまうため、熱帯・亜熱帯地域であることが栽培の前提となります。さらに、コーヒー豆の成長期には十分な雨が降り(年間降雨量1800mm~2500mm)、収穫期には乾燥しているという、雨季と乾季が明確に分かれた気候が理想的とされています。

これらの厳しい条件を満たすのが、中南米、アフリカ、アジア・太平洋地域の国々であり、コーヒーベルトに位置する約60カ国が世界のコーヒー生産を支えているのです。

味を決定づける3大要素「品種・栽培環境・精製方法」

同じ国のコーヒーであっても、農園や地域によって味が異なるのはなぜでしょうか。その秘密は、主に「品種」「栽培環境」「精製方法」という3つの要素の組み合わせにあります。

1. 品種 (Variety)

コーヒー豆には多くの品種が存在しますが、商業的に栽培されているのは主に「アラビカ種」と「カネフォラ種(ロブスタ)」の2種類です。

  • アラビカ種: 世界の生産量の約6割を占める主流の品種です。病害虫に弱く栽培が難しい反面、豊かな酸味と複雑で華やかな香りを持ち、高品質なスペシャルティコーヒーの多くがこの品種です。
  • ロブスタ種: 病害虫に強く、低地でも栽培が可能なたくましい品種です。アラビカ種に比べてカフェイン含有量が多く、苦味が強く、香ばしい風味が特徴です。主にインスタントコーヒーや缶コーヒー、エスプレッソのブレンドなどに使用されます。

2. 栽培環境 (Terroir)

ワインの世界で使われる「テロワール」という言葉は、コーヒーにも当てはまります。これは、豆が育つ土地の気候、土壌、標高といった自然環境全体を指します。

  • 標高: 特に重要な要素の一つです。標高が高い冷涼な地域では、コーヒーチェリーがゆっくりと時間をかけて成熟します。これにより、豆の密度が高まり、糖分や酸味、香りの成分が凝縮され、複雑で質の高い風味が生まれる傾向があります。
  • 土壌: 火山性の肥沃な土壌は、コーヒーの木に必要な栄養素を豊富に含んでおり、風味豊かな豆を育む上で有利とされています。

3. 精製方法 (Processing Method)

収穫したコーヒーチェリー(果実)から、中の種子(コーヒー豆)を取り出す工程を「精製」と呼びます。この方法が、コーヒーの風味を劇的に変えるのです。

  • ナチュラル(非水洗式): チェリーを果実のまま天日で乾燥させる、最も古くからある方法です。果肉の糖分や風味が豆に移るため、果実味豊かで、ワインのような芳醇な香りや、しっかりとした甘みとコクが生まれます。
  • ウォッシュド(水洗式): チェリーの果肉を機械で除去した後、水槽に浸けて粘液質(ミューシレージ)を洗い流してから乾燥させる方法です。豆本来のクリーンな味わいが引き立ち、爽やかで明るい酸味が特徴となります。
  • その他: 上記の中間的な「パルプドナチュラル」や、インドネシア独自の「スマトラ式」など、地域や気候に合わせて様々な方法が開発されています。

世界のコーヒー生産国ランキングと消費の動向

どの国がコーヒーの世界で大きな影響力を持っているのかを知るために、まずは生産量ランキングを見てみましょう。これは、どのコーヒーで有名な国が市場に最も多くの豆を供給しているかを示す指標です。

世界のコーヒー豆 生産量ランキング (2023年)

順位国名生産量(トン)世界計構成比
1ブラジル3,405,26730.8%
2ベトナム1,956,78217.7%
3インドネシア760,1926.9%
4コロンビア680,8586.2%
5エチオピア559,4005.1%
6ホンジュラス384,3613.5%
7ウガンダ384,0003.5%
8ペルー369,5513.3%
9インド332,8483.0%
10中央アフリカ316,1082.9%

出典: FAOSTATのデータを基に作成

このランキングから、ブラジルが世界の約3分の1を生産する圧倒的な大国であり、ベトナムがそれに続く存在であることがわかります。この上位2カ国だけで、世界の生産量の約半分を占めています 23

興味深いのは、コーヒーを多く生産する国と、多く消費する国が必ずしも一致しない点です。一人当たりのコーヒー消費量が最も多いのはノルウェーで、日本人の約3倍にもなります。上位にはスイスやその他のヨーロッパ諸国が名を連ねており、コーヒーが生産地の熱帯地域から、消費地の温帯・冷帯地域へと流れる世界的な商品であることがうかがえます。

日本はどこからコーヒー豆を輸入している?

私たちの身近な一杯は、どの国から来ているのでしょうか。日本のコーヒー豆輸入量ランキングを見ることで、日本市場における各産地の重要性がわかります。

日本のコーヒー生豆 国別輸入量ランキング (2021年)

順位国名輸入量(トン)構成比
1ブラジル146,24335.8%
2ベトナム100,32524.6%
3コロンビア47,67011.7%
4インドネシア24,8826.1%
5グアテマラ19,9134.9%

出典: 財務省「貿易統計」のデータを基に作成

ブラジル、ベトナム、コロンビアの上位3カ国で、日本のコーヒー豆輸入量全体の約4分の3を占めています 25。特に注目すべきは、世界ランキング同様、ベトナムが第2位に位置していることです。しかし、スペシャルティコーヒー専門店で「ベトナム」の豆がシングルオリジンとして並ぶ機会は、ブラジルやコロンビアに比べて少ないかもしれません。

これは、ベトナム産のコーヒー豆(主にロブスタ種)が、その力強い苦味とコストパフォーマンスの高さから、缶コーヒーやインスタントコーヒー、安価なブレンドコーヒーのベースとして広く利用されているためです。つまり、私たちが意識せずとも、日常的に口にしているコーヒーの多くにベトナム産の豆が使われている可能性が高いのです。この事実は、統計データが私たちの食生活と深く結びついていることを示しています。

初心者が知っておきたい味の表現(酸味・コク・香り)

コーヒーの味を表現する言葉を知っておくと、豆選びが格段に楽しくなります。ここでは、特に重要な3つの言葉を解説します。

  • 酸味 (Acidity): レモンやオレンジのような柑橘系、あるいはベリー系の果物を食べた時のような、爽やかで明るい風味を指します。決して不快な「酸っぱさ」ではありません。高品質なコーヒーの証ともされ、特に標高の高い産地で育ったウォッシュド精製の豆に顕著に現れる傾向があります。
  • コク (Body/Richness): コーヒーを口に含んだ時の、舌触りや質感、重厚感のことです。水のようにサラッとしているものから、牛乳やシロップのようにトロリとした口当たりのものまで様々です。一般的に、インドネシア産のコーヒーは重厚なコクを持つことで知られています。
  • 香り (Aroma/Flavor): コーヒーが持つ最も多彩な要素です。ナッツやチョコレートのような香ばしい香り(ブラジルなど)、ジャスミンの花のようなフローラルな香り(エチオピアなど)、スパイスやハーブのような個性的な香り(インドネシアなど)まで、産地や精製方法によって無限のバリエーションが生まれます。

本記事で紹介するコーヒー有名産地7選

これまでの基礎知識を踏まえ、次のセクションでは、個性の異なる7つの主要なコーヒー生産国を詳しくご紹介します。

  1. ブラジル
  2. コロンビア
  3. エチオピア
  4. ベトナム
  5. インドネシア
  6. グアテマラ
  7. ケニア

これらの国々は、生産量、歴史、風味の多様性といった観点から、コーヒーの世界を知る上で欠かせない存在です。それぞれの国のコーヒーが持つ物語を紐解きながら、あなた好みの一杯を見つける旅に出かけましょう。

コーヒーで有名な国7選!産地別の味の特徴を徹底解説

ここからは、世界地図を広げ、7つのコーヒーで有名な国を巡る旅に出発します。それぞれの国が持つ独自の栽培環境や文化が、どのようにしてコーヒーの味を形作っているのか、その秘密に迫ります。あなたの好みに合う一杯が、この中にきっと見つかるはずです。

①ブラジル:苦味と酸味のバランスが良い「王道」

100年以上にわたり世界のコーヒー生産量第1位に君臨するブラジルは、まさに「コーヒーの王様」と呼ぶにふさわしい存在です。世界で生産されるコーヒーの約3分の1がブラジル産であり、その安定した供給量とバランスの取れた味わいから、世界中のブレンドコーヒーのベースとして欠かせない役割を担っています。

風味の特徴

ブラジルコーヒーの最大の魅力は、多くの人が「コーヒーらしい」と感じるであろう、親しみやすい味わいにあります。酸味は控えめで、苦味も穏やか。ナッツやチョコレートを思わせる香ばしい甘みと、滑らかな口当たりが特徴です。突出した個性を持つというよりは、全体の調和がとれた安心感のあるテイストで、毎日飲んでも飽きがこないでしょう。

味わいの背景

この「王道」の味わいは、ブラジルの広大な国土と生産方法によって生み出されています。コーヒー農園は、比較的標高の低い(600m~1500m)平坦な台地に広がっています。一般的に、標高が低いと酸味は穏やかになる傾向があります。さらに、ブラジルは収穫期に雨が少ない乾燥した気候に恵まれており、収穫したコーヒーチェリーをそのまま天日で乾燥させる「ナチュラル(非水洗式)」という精製方法が主流です。この方法は、果肉の甘みが豆にじっくりと浸透するため、コーヒーに豊かなコクと甘みを与え、元々穏やかな酸味をさらにまろやかにします。つまり、ブラジルの特徴的な風味は、その広大な土地の気候と、大規模生産に適した効率的な精製方法が組み合わさった必然の結果なのです。

  • 主な品種: ムンドノーボ(病気に強くバランスが良い)、カトゥアイ(甘みが特徴)など。
  • 主な精製方法: ナチュラル(非水洗式)、パルプドナチュラル。
  • こんな方におすすめ: 酸味の強いコーヒーが苦手な方、毎日気軽に飲めるバランスの良いコーヒーを探している方、初めて本格的なコーヒー豆を選ぶ方。

②コロンビア:豊かなコクと際立つ甘み「マイルドコーヒー」の代表格

アンデス山脈の麓で育まれるコロンビアコーヒーは、その品質の高さで世界的に知られています。生産量でも常に上位に位置し、ブラジルと並んで日本でも非常に人気の高い産地です。コロンビア産のコーヒーは「マイルドコーヒー」の代名詞とされ、その名の通り、優しく洗練された味わいが特徴です。

風味の特徴

コロンビアコーヒーは、豊かなコクとキャラメルやナッツを思わせる甘みが際立ちます。酸味は穏やかでありながら、柑橘系のような爽やかさも感じられ、苦味とのバランスが絶妙です。後味はすっきりとしており、非常にクリーンな印象を与えます。コロンビア産コーヒー豆の中でも、厳格な基準をクリアしたわずか3%未満の最高級品だけが「エメラルドマウンテン」の称号を与えられ、その調和の取れた味わいは高く評価されています。

味わいの背景

この卓越したバランスと透明感は、コロンビアの険しい地形と丁寧な生産工程の賜物です。コーヒーは、標高900mから2300mにもなるアンデス山脈の急斜面で栽培されています。この大きな寒暖差が、豆に豊かな甘みと良質な酸を育みます。そして、コロンビアでは山岳地帯の豊富な水資源を活かした「ウォッシュド(水洗式)」が伝統的な精製方法です。この方法は、収穫後すぐに果肉やぬめりを全て洗い流すため、果実由来の雑味がなく、豆が本来持つクリーンな風味特性がストレートに表現されます。高地で育まれたポテンシャルを、ウォッシュド製法で磨き上げる。これが、コロンビアの「マイルド」な味わいの秘密です。

  • 主な品種: カスティージョ、コロンビア(共に病気に強く、優れた風味を持つ)など。
  • 主な精製方法: ウォッシュド(水洗式)。
  • こんな方におすすめ: バランスの取れた味わいが好きな方、甘みとコクを重視する方、すっきりとした後味のコーヒーを求める方。

③エチオピア:コーヒー発祥の地が育む「フルーティー&フローラル」な香り

全てのコーヒーの物語が始まった場所、それがエチオピアです。今でも野生のコーヒーの木が自生するこの国は、まさにコーヒーの遺伝子の宝庫。その多様性から生まれるコーヒーは、他のどの産地とも一線を画す、華やかで複雑な香りを放ちます。

風味の特徴

エチオピアコーヒーの魅力は、まるで香水のように多彩なアロマにあります。その風味は精製方法によって大きく二つに分かれます。

  • ナチュラル(非水洗式): ブルーベリーやストロベリージャムを思わせる、濃厚で甘い果実味が特徴です。完熟したフルーツやワインのような芳醇な香りが口いっぱいに広がります。
  • ウォッシュド(水洗式): ジャスミンやベルガモットのような花の香り、レモンティーを思わせるような爽やかな柑橘系の酸味が際立ちます。紅茶のように繊細で、クリーンな飲み口が魅力です。

味わいの背景

エチオピアは、特定の品種名ではなく「エチオピア・ヘアルーム(在来種)」と総称される、数千種類もの原種が混在して栽培されている、世界でも稀有な場所です。この圧倒的な遺伝的多様性が、複雑な風味の基盤となっています。そして、エチオピアほど精製方法による味の違いを明確に体感できる産地はありません。同じシダモやイルガチェフェといった地域で収穫された豆でも、ナチュラル精製かウォッシュド精製かで、全く異なる個性を持つコーヒーに仕上がります。ナチュラル精製では、乾燥中に果肉の成分が豆に浸透し、フルーティーなキャラクターを形成します。一方、ウォッシュド精製では果肉を洗い流すことで、豆が内に秘めた繊細な花の香りと酸味を解放します。エチオピアコーヒーを飲むことは、精製という工程が持つ創造的な力を発見する体験でもあるのです。

  • 主な品種: エチオピア・ヘアルーム(在来種)。
  • 主な精製方法: ナチュラル(非水洗式)、ウォッシュド(水洗式)。
  • こんな方におすすめ: フルーティーで個性的なコーヒーが好きな方(ナチュラル)、紅茶やハーブティーのような華やかな香りを求める方(ウォッシュド)、コーヒーの奥深さを探求したい方。

④ベトナム:世界第2位の生産国が生む「濃厚な苦味と独特の文化」

ブラジルに次ぐ世界第2位のコーヒー生産国であるベトナムは、特にロブスタ種の生産においては世界一を誇ります。スペシャルティコーヒーの世界ではあまり馴染みがないかもしれませんが、ベトナムは独自のコーヒー文化を築き上げ、世界中のコーヒー市場に大きな影響を与えています。

風味の特徴

ベトナムコーヒーの味は、その主役であるロブスタ種によって定義されます。力強い苦味と、麦茶のような香ばしさが最大の特徴です。酸味はほとんど感じられず、濃厚でどっしりとしたボディ感があります。アラビカ種のような繊細さとは対極にある、パンチの効いた味わいです。

味わいの背景

ベトナムのコーヒー文化は、ロブスタ種の個性を否定するのではなく、むしろ最大限に活かす方向で発展しました。この力強い苦味をどう楽しむか、その答えがベトナム独自の飲み方にあります。伝統的な抽出には「カフェ・フィン」と呼ばれる金属製のフィルターが使われ、お湯を注いでゆっくりと時間をかけて濃厚なコーヒーを抽出します。そして、そのコーヒーにたっぷりのコンデンスミルク(練乳)を加えて飲むのが「カフェ・スア・ダー(ベトナム風ミルクコーヒー)」です。ロブスタ種の強烈な苦味と、コンデンスミルクの濃厚な甘さが一体となることで、互いの個性を打ち消し合うのではなく、見事に調和した唯一無二の味わいが生まれるのです。これは、手に入る食材を工夫して最高の味を生み出すという、優れた食文化の一例と言えるでしょう。

  • 主な品種: ロブスタ種。
  • 主な精製方法: ナチュラル(非水洗式)が主流。
  • こんな方におすすめ: 強い苦味と濃厚な味わいを好む方、甘いコーヒーが好きな方、世界のユニークなコーヒー文化に触れてみたい方。

⑤インドネシア:大地を思わせる「個性的で重厚なコク」

赤道にまたがる数千の島々からなるインドネシアは、世界第3位の生産量を誇るコーヒー大国です。特にスマトラ島の「マンデリン」や、スラウェシ島の「トラジャ」は、その独特で力強い風味から世界中のコーヒー愛好家を魅了し続けています。

風味の特徴

インドネシアコーヒーを語る上で欠かせないのが、その圧倒的な「コク(ボディ)」です。シロップのようにとろりとした重厚な口当たりと、大地やハーブ、スパイスを思わせるような複雑でアーシー(土のような)な香りが特徴です。酸味は非常に穏やかで、深みのある苦味が長く続く余韻も魅力の一つ。一度飲んだら忘れられない、強烈な個性を持っています。

味わいの背景

この唯一無二の風味は、インドネシアの高温多湿な気候への適応から生まれた、独自の精製方法「スマトラ式(ウェットハル、現地ではギリン・バサ)」によって生み出されます。多雨な気候では、コーヒーチェリーを完全に乾燥させるのに時間がかかり、カビの発生リスクが高まります。そこで考案されたのが、豆がまだ高い水分を含んだ生乾きの状態で、硬い殻(パーチメント)を脱穀してしまうという方法です。通常、パーチメントは豆を保護する役割を果たしますが、スマトラ式では早い段階でそれを取り除くため、豆はむき出しの状態で最終乾燥されます。この過程で、豆が周囲の環境の影響を受けやすくなり、独特の大地を思わせる風味が豆に刻み込まれるのです。つまり、マンデリンの個性的な味わいは、厳しい気候を乗り越えるための人間の知恵が生んだ、偶然の産物とも言えるでしょう。

  • 主な品種: マンデリン、トラジャといった地域名で知られるアラビカ種や、生産量の大部分を占めるロブスタ種。
  • 主な精製方法: スマトラ式(ウェットハル)。
  • こんな方におすすめ: 重厚なコクと深みのある苦味を求める方、酸味の少ないコーヒーが好きな方、個性的で忘れられない一杯に出会いたい方。

⑥グアテマラ:火山が育む「華やかで複雑な風味」

マヤ文明が栄えた中米の国グアテマラは、スペシャルティコーヒーの世界で非常に高く評価されている産地です。国土の多くを山岳地帯が占め、その豊かな火山性土壌と高い標高が、品質の高いコーヒーを生み出すための理想的な環境を提供しています。

風味の特徴

グアテマラコーヒーは、しばしば「華やかで複雑」と表現されます。チョコレートやローストナッツのようなしっかりとした甘みとコクをベースに持ちながら、リンゴやオレンジを思わせるような明るく上品な酸味、そして花のような甘い香りが絶妙なバランスで共存しています。一口飲むごとに様々な表情を見せる、奥行きのある味わいが魅力です。

味わいの背景

グアテマラのコーヒーが持つこの複雑性は、最高の「テロワール」と丁寧な「精製」の掛け算によって生まれます。30以上もの火山が点在するこの国では、ミネラルを豊富に含んだ火山性土壌がコーヒーの木に豊かな栄養を与えます。また、多くの農園が標高1300m以上の高地にあり、昼夜の寒暖差によって豆はゆっくりと成熟し、複雑な風味成分を蓄えます。こうして育まれた豆のポテンシャルを最大限に引き出すのが、クリーンな味わいを生む「ウォッシュド(水洗式)」精製です。豊かな土壌と高地が風味の「素材」を作り、ウォッシュド精製がその素材を曇りなく磨き上げる。この理想的な組み合わせが、グアテマラコーヒーの洗練された味わいを形作っているのです。

  • 主な品種: ブルボン、カトゥーラなど、伝統的で風味評価の高いアラビカ種。
  • 主な精製方法: ウォッシュド(水洗式)。
  • こんな方におすすめ: コロンビアコーヒーが好きで、もう少し複雑さや華やかさを試してみたい方、甘み・酸味・コクのバランスが取れたコーヒーを好む方。

⑦ケニア:際立つ酸味と甘さ「力強くジューシー」な一杯

アフリカ大陸を代表する高品質コーヒーの生産国、ケニア。そのコーヒーは、他のどの産地とも比較できないほど、鮮やかで力強い酸味と、凝縮された果実味を持つことで知られています。スペシャルティコーヒーの世界では、そのユニークな個性から熱狂的なファンを持つ存在です。

風味の特徴

ケニアコーヒーの風味を最も特徴づけるのは、その明るく、ジューシーで、複雑な酸味です。カシス(クロスグリ)やグレープフルーツ、時にはトマトのような、甘酸っぱくもどこか野性味のある風味が感じられます。ただ酸味が強いだけでなく、シロップのようなしっかりとした甘みとコクがそれを支えており、飲みごたえのある一杯となります。その味わいは、まるで良質な赤ワインのようです。

味わいの背景

この強烈な個性は、偶然生まれたものではなく、品質を追求するケニアのコーヒー産業システムによって意図的に作り出されています。まず、栽培されている品種「SL28」と「SL34」は、1930年代にスコット研究所(Scott Laboratories)によって、風味のポテンシャルと乾燥への耐性を基準に選抜された優良品種です 51。さらに、精製方法も独特です。通常のウォッシュド精製に加えて、発酵・水洗の後に、もう一度きれいな水に豆を浸す「ソーキング」という工程を経ることがあります。この「ダブルファーメンテーション」とも呼ばれる丁寧な工程が、ケニアコーヒーの酸の質をさらに磨き上げ、透明感と複雑さを与えているのです。優れた品種を選び、独自の精製技術でその個性を最大限に引き出す。ケニアのコーヒーは、まさに科学と情熱の結晶と言えるでしょう。

  • 主な品種: SL28(複雑な柑橘系の風味)、SL34(ジューシーな甘みとボディ)。
  • 主な精製方法: ケニア式ウォッシュド(ダブルファーメンテーションを含む)。
  • こんな方におすすめ: 明るくフルーティーな酸味を愛する方、コーヒーにワインのような複雑さを求める方、忘れられない一杯を体験したい冒険心のある方。

コーヒーで有名な国について知っておきたいポイントのまとめ

今回はコーヒーで有名な国のそれぞれの特徴についてお伝えしました。以下に、本記事の内容を要約します。

・コーヒーの栽培は赤道付近の「コーヒーベルト」に集中している

・ブラジルは世界最大のコーヒー生産国であり王道的な味わい

・ブラジル産はナッツやチョコのような風味で酸味が穏やかな傾向

・コロンビアはマイルドコーヒーの代表格でバランスの良さが特徴

・コロンビアでは主に水洗式(ウォッシュド)で精製されクリーンな味になる

・エチオピアはコーヒー発祥の地で多様な「原種(ヘアルーム)」が存在

・エチオピアのナチュラル精製は果実味豊か、ウォッシュド精製は花のような香り

・ベトナムは世界第2位の生産国でロブスタ種が主流

・ベトナムコーヒーは濃厚な苦味をコンデンスミルクの甘さで楽しむ文化

・インドネシアは「スマトラ式」という独自精製法で特有の風味を生む

・マンデリンに代表されるインドネシア産は大地のような重厚なコクが特徴

・グアテマラのコーヒーは火山性土壌により華やかで複雑な味わい

・ケニアはカシスにも似た力強くジューシーな酸味が魅力

・豆の品種(アラビカ種・ロブスタ種)は味の根本を左右する要素

・精製方法(ナチュラル・ウォッシュド等)の違いが最終的な風味を大きく変える

この記事を参考に、ぜひ様々な国のコーヒーを試してみて、あなただけのお気に入りを見つけてみてください。産地の違いがわかると、毎日のコーヒータイムがもっと奥深く、楽しいものになるはずです。次の一杯を選ぶとき、今日の発見がきっと役立つことでしょう。

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