手軽に楽しめるインスタントコーヒーは、私たちの日常に深く根付いていますが、「インスタントコーヒーはカリウムが多い」という話を耳にして、少し気になっている方もいらっしゃるかもしれません。
特に、コーヒーを愛飲している方にとって、「血圧やむくみへの影響はどうなのだろうか」「健康面で注意すべき点はあるのか」といった疑問は、当然のものと言えるでしょう。
本記事では、プロのWEBライターという客観的な立場から、収集した情報に基づき、コーヒーとカリウムの関係性について整理していきます。
特にインスタントコーヒーのカリウム含有量に焦点を当て、なぜそのように言われるのか、その理由の探求を試みます。
さらに、カリウムというミネラルが私たちの体、とりわけ「血圧」や「むくみ」、そして「腎臓」といった側面と、どのように関わっている可能性があるのかを、偏りのないバランスの取れた視点で考察していきます。
なお、本記事は特定の健康効果を保証したり、医学的な判断を提供したりするものではありません。また、筆者の個人的な体験談は含まず、あくまでも収集された情報から見えてくる可能性や、皆様の気付きとなる情報を提供することを目的としています。
コーヒーに含まれるカリウム含有量と「インスタントが多い」とされる理由
まず、読者の皆様が最も関心をお持ちの「コーヒーのカリウム含有量は本当に多いのか?」そして「なぜインスタントコーヒーは多いと言われるのか?」という疑問について、具体的な数値を交えながら掘り下げていきます。
そもそも「カリウム」とは?体内で期待される役割
私たちが「カリウム」と呼んでいるものは、人体にとって不可欠な「必須ミネラル」の一つとして知られています。
その最も重要な役割の一つとして考えられているのが、細胞の外液に存在する「ナトリウム」、すなわち「塩分」とのバランスを保つことです。カリウムは主に細胞内に存在し、ナトリウムと連携しながら細胞を正常に保ち、体内の状態を常に一定に維持する「恒常性」に寄与しているとされています。
現代の食生活では、ナトリウムの摂取が過剰になりがちですが、カリウムには、体内に増えすぎたナトリウムと作用し、尿としての排出を促す働きがある可能性も指摘されています。この働きが、塩分の摂りすぎを調整する上で役立っていると考えられます。
一方で、カリウムが不足した場合には、体に力が入らない脱力感や食欲不振、筋力の低下、さらには精神障害や不整脈といった症状につながる可能性も報告されています。
インスタントコーヒーのカリウム含有量(1杯あたり)
では、インスタントコーヒーには具体的にどれくらいのカリウムが含まれているのでしょうか。
ある情報によれば、インスタントコーヒーのティースプーン1杯(約2g)あたりに含まれるカリウム量は、約72mgという一つの目安が示されています。
この「72mg」という数値をどう捉えるかが、今回のテーマの鍵となります。この数値が他の飲み物や、1日に必要な摂取量と比較して「多い」のか「少ない」のかを、順を追って見ていく必要があります。
ドリップコーヒーとのカリウム含有量比較
インスタントコーヒーの数値を評価するために、まずは最も身近な比較対象であるドリップコーヒー(レギュラーコーヒー)と比べてみましょう。
ドリップ式で抽出したコーヒーの場合、そのカリウム量は100ccあたり約65mgというデータが見られます。
ここで、インスタントコーヒー1杯(粉末2g)を100ccのお湯で溶かした場合(カリウム約72mg)と、ドリップコーヒー100cc(カリウム約65mg)を比較すると、確かにインスタントコーヒーの方がわずかにカリウム含有量が多い傾向にある可能性が示唆されます5。
このわずかな差が、「インスタントコーヒーはカリウムが多い」という認識が広まる一因となっているのかもしれません。
なぜインスタントコーヒーはカリウムが多くなる傾向が示唆されるのか
では、なぜこのような含有量の差が生まれるのでしょうか。その理由は、両者の製造方法の違いに起因する可能性が考えられます。
ドリップコーヒーが「コーヒー豆から成分を一度だけ抽出する」のに対し、インスタントコーヒーは、一度コーヒー豆から抽出液(ドリップコーヒーに近い液体)を作り、その抽出液をさらに「濃縮」し、最終的にスプレードライやフリーズドライといった方法で乾燥させて粉末や顆粒にします。
カリウムは水に溶けやすい水溶性のミネラルです。製造工程で水分を蒸発させ、コーヒーの固形成分を「濃縮」する際、水分は失われますが、カリウムなどのミネラル成分はそのまま凝縮されて残ると推察されます。
結果として、同じ重量のコーヒー豆から始めたとしても、最終的な製品(2gの粉末)には、ドリップコーヒー1杯分(100cc)よりも凝縮されたカリウムが含まれる可能性がある、というわけです。
他の飲み物と比べたコーヒーのカリウム量
インスタントコーヒーはドリップコーヒーよりも「わずかに多い」傾向が見えましたが、視点を変えて、他の一般的な飲料と比較した場合、コーヒーのカリウム量はどのような位置づけになるのでしょうか。
ここで、いくつかの飲料の100mlあたりのカリウム含有量(目安)を比較してみましょう。
| 飲料の種類 | カリウム含有量(100mlあたり目安) |
| 野菜ミックスジュース(濃縮還元) | 約310mg |
| 牛乳 | 約150mg |
| コーヒー(浸出液) | 約65mg |
| ウーロン茶(浸出液) | 約13mg |
| 緑茶(ペットボトルなど) | 約10~12mg |
※コーヒーの数値はの「コーヒー(浸出液)」を採用していますが、ドリップ(65mg)やインスタント(72mg)とも近い値です。
この比較から見えてくるのは、非常に興味深い事実です。コーヒーのカリウム含有量(約65mg〜72mg)は、野菜ジュース(約310mg)や牛乳(約150mg)といった他の一般的な飲料に比べると、むしろ「少ない」ことがわかります。
しかしその一方で、私たちが日常的に飲む他のお茶類、例えば緑茶(約10~12mg)やウーロン茶(約13mg)と比較すると、「5倍以上多い」こともまた事実です。
つまり、「インスタントコーヒーはカリウムが多い」という言葉は、「お茶と比べれば確かに多い」が、「野菜ジュースや乳飲料と比べれば少ない」という、比較対象によって評価が変わる、相対的なものである可能性が見えてきます。
1日の摂取目標量から見るコーヒーのカリウム
最後に、マクロな視点、つまり1日の総摂取量という観点から、コーヒー1杯のカリウム(約72mg)がどれほどの影響を持つのかを見てみましょう。
厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、生活習慣病の予防を目的とした1日あたりのカリウム摂取の「目標量」を、成人男性で3,000mg以上、成人女性で2,600mg以上としています。ちなみに、WHO(世界保健機関)は男女ともに3,510mg/日を推奨しています。
仮に、成人男性(目標量3,000mg)がインスタントコーヒーを1杯(カリウム約72mg)飲んだとします。この場合、摂取するカリウム量は、1日の目標量のわずか「約2.4%」に過ぎない計算になります。
この視点からは、コーヒー1杯がカリウム摂取量全体に与える影響は、限定的である可能性が考えられます。カリウムの摂取は、するめ(1,100mg/100g)やかつお節(940mg/100g)といった他の食品3や、野菜、果物など、食事全体でバランスを考えることが、より重要であると言えるかもしれません。
コーヒーとカリウムがもたらす影響:血圧・むくみ・腎臓への配慮
コーヒーに含まれるカリウム量が、他の飲料との比較や1日の目標量の中でどのような位置づけにあるかが見えてきました。次に、サブキーワードである「血圧」「むくみ」「腎臓」といった健康面への関わりについて、コーヒーとカリウムがもたらす可能性のある影響を考察します。
カリウムと「むくみ」の関係性:塩分(ナトリウム)排出の可能性
カリウムの摂取が「むくみ」の解消に役立つ、という話が聞かれることがあります。これは、先に述べたカリウムの持つ「ナトリウム排出」の働きと深く関連している可能性があります。
一般的に、塩分(ナトリウム)を多く摂取すると、体は体内の塩分濃度を一定に保とう(薄めよう)として、水分を溜め込もうとすると考えられています。これが、私たちが「むくみ」として感じる現象の一因となっている可能性があります。
ここでカリウムを摂取すると、カリウムが腎臓に働きかけ、過剰なナトリウムの排出を促すことが期待されます。ナトリウムが尿として排出される際、溜め込まれていた水分も一緒に排出されやすくなるため、結果としてむくみの軽減につながる可能性がある、というメカニズムが推察されます。
塩分の多い食事をした後に、カリウムを含むコーヒーを飲むことが、体内のミネラルバランスの調整に、ささやかながら一助となる可能性も考えられなくはありません。
コーヒーと血圧への影響:カリウムとカフェインの二面性
コーヒーと血圧の関係性については、非常に興味深い二面性を持っている可能性があります。
一つ目の側面は、今まさに触れた「カリウム」による調整作用です。カリウムにはナトリウムの排出を促す働きが期待されるため、これは血圧を「下げる」方向に作用する可能性があります。体内の余分なナトリウムと水分が排出されれば、血液の総量が減少し、血管壁にかかる圧力が低下するため、というのがその理由として考えられます。
しかし、コーヒーにはもう一つの重要な成分、「カフェイン」も含まれています。カフェインの摂取は、交感神経を刺激するなどの理由から、一時的に血圧を「上げる」可能性があることが知られています。
つまり、コーヒー1杯の中には、血圧に対して「下げる」可能性のある要因(カリウム)と、「上げる」可能性のある要因(カフェイン)が同居していると言えるかもしれません。
ただし、カフェインによる血圧上昇は一時的なものであり、その上昇幅も、私たちが日常的に行う会話や食事、歩行といった活動による血圧の変動と大差ない可能性も示唆されています。長期的な高血圧への影響については、現状では大きな影響は見られないとする見方もあるようです。
健康維持に重要な「塩分」とカリウムのバランス
ここまで見てきたように、カリウムの健康への影響を考える上で、「塩分」(ナトリウム)の存在は切り離せない重要な要素であるようです。
注目すべきは、カリウムやナトリウムの絶対量そのものよりも、両者の「摂取比率」や「バランス」である可能性が示唆されています。
特に、ナトリウムの摂取が過剰であり、なおかつカリウムの摂取が不足している状態は、高血圧をはじめとする生活習慣病のリスクを高める一因になると考えられています。
コーヒーから摂取するカリウム(1杯約72mg)は、このバランスをカリウム側に少し傾けるための一助となるかもしれませんが、それ以上に、食事全体での塩分(ナトリウム)摂取を管理し、野菜や果物などから十分なカリウムを摂取することが、健康維持の観点からはより重要であると考えられます。
腎臓の健康状態とカリウム摂取:注意が必要なケースとは
カリウムは通常、食事から過剰に摂取した場合でも、体内の優れた調節機構によって尿として排出されます。そして、この重要な調節を担っているのが「腎臓」です。
腎臓の機能が正常に働いている場合、食事やコーヒーからカリウムを摂取しても、体が必要とする分以外は適切に排出されるため、通常、カリウムが過剰になる「高カリウム血症」になることは稀であると言われています。
しかし、注意が必要なのは、腎不全など、何らかの理由で腎臓の機能が低下している場合です。この場合、カリウムを排出する調節機構がうまく働かない可能性があります。
腎臓がカリウムを十分に排出できなくなると、体内にカリウムが蓄積し、血液中のカリウム濃度が異常に高くなる「高カリウム血症」を引き起こすリスクが高まることが懸念されます。
このため、腎機能に懸念がある方や、すでに医師からカリウム制限の指導を受けている方は、コーヒーのようにカリウムが(お茶などと比べて)比較的多く含まれる飲料の摂取に関しても、慎重な判断が求められる場合があります。
高カリウム血症のリスクとは
腎機能が低下している場合に懸念される高カリウム血症は、単に「カリウムが多い状態」というだけではなく、深刻な健康リスクを伴う可能性があります。
血液中のカリウム濃度が上昇すると、心臓の電気的な働きに影響を与え、不整脈が起こりやすくなったり、心電図に異常が発生したりすることが報告されています。
非常に重篤な場合、例えば血中カリウム濃度が$7.0mEq/L以上といった極めて高いレベルになると、心臓が停止する危険性さえ指摘されています。
ただし、これはあくまで腎機能が正常に働いていない場合に、カリウムの摂取と排出のバランスが崩れた際に高まるリスクです。健康な方が通常の食生活の中でコーヒーを楽しむ場合に、直ちにこのリスクを過度に心配する必要は低いと考えられます。
なお、腎臓病患者向けなど、カリウム摂取に特別な配慮が必要な方のために、ゼオライトで処理するといった特殊な製法を用いて、カリウム含有量を意図的に低減させた「低カリウムコーヒー」も開発・販売されているようです。
コーヒーとカリウムの関係性についてのまとめ
今回はコーヒーとカリウムの関係性についてお伝えしました。以下に、本記事の内容を要約します。
・カリウムは必須ミネラルの一つ
・体内のナトリウムとのバランスを保つ働きを持つ
・インスタントコーヒー1杯(2g)のカリウム目安は約72mg
・ドリップコーヒー(100cc)のカリウム目安は約65mg
・インスタントは製造時の濃縮工程でカリウムが凝縮される可能性がある
・コーヒーのカリウム量は野菜ジュースや牛乳より少ない傾向
・緑茶やウーロン茶と比較するとコーヒーのカリウム量は多い
・1日のカリウム摂取目標量は成人男性で3,000mg以上
・コーヒー1杯のカリウムは1日の目標量のごく一部
・カリウムは過剰な塩分(ナトリウム)の排出を促す
・この働きが「むくみ」の調整に関わる可能性
・カフェインは一時的に血圧を上昇させる可能性
・カリウムは血圧調整(ナトリウム排出)に関わる可能性
・健康な腎臓はカリウム排出を調節する
・腎機能が低下している場合は高カリウム血症のリスクに注意が必要
コーヒーに含まれるカリウムは、健康な方にとってはナトリウムとのバランスを取る上で重要な役割を担っている可能性が考えられます。
一方で、ご自身の健康状態、特に腎臓の機能についてご懸念がある場合は、飲む量や種類(低カリウムコーヒーなど)について専門家にご相談されるのが賢明かもしれません。
本記事が、ご自身の食生活とコーヒーとの付き合い方を見直すための一助となれば幸いです。

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